HAWKS or  nothing

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 1994年、秋。とある古本屋。
 今でこそ近所にブックオフがあるが、当時は近所に古本屋がなく、よく自転車で15分程の商店街のはずれの古本屋に行っていた。
 この日もその古本屋で漫画を探していたとき、店主とその常連か友人らしき男性が話していた。
「王が来るげな」
「どうせ人寄せパンダやろ。すぐ投げ出して巨人に帰る」
......少々口の悪い二人だったようだ。
 王選手...名前はもちろん知っていたが、どれだけ凄い人なのか偉大な人なのか、まだ野球ファン、いや、ホークスファンになりたての自分には分からな かった。
 ここから、少しずつ時間をかけて、どれだけすごい人なのか実感してゆくことになるのだ...。

 2008年、秋。9月24日。
 いつも以上の熱狂と興奮状態のヤフードームの客席で、そんな遠い出来事をぼんやりと思い出していた。思えば、そ の古本屋での出来事が私にとっての『王ホークス』の始まりだったのかもしれない。

  7回表、ジェット風船をふくらまし、応援歌が流れるのを待っていた。
 この間、王監督辞任発表以来、ずっとこらえていた涙が流れてきた。王監督 が辞めることに対してでもあるが、目の前の不甲斐ない試合展開が悔しかったのだ。
 最後のホームの試合だというのに、打者はチャンスにフリフリと 凡退。今は投手がポコポコと打たれている。

 悔しくて、悔しくて、ウェーンと泣いていた。
 もし自分があの場にいたなら、ちゃんと打つのに!ちゃんと守るのに!ちゃんとうまくやる のに!!などとわけのわからないことを考えながら。
 この日は、ここで泣きつく してしまった。

 ─ 王監督、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

 あっと言う間だった。短かった。長かっ たけど。あっという間に駆け抜けた14年間だった。...ずっと当たり前のようにこの日は続くと思っていた。
 
 あの古本屋で王監督就任 の話を聞いたとき、まさかこんなに 永く、苦しみ、喜び、悲しみを共にするとは思わなかった。

 そう言えば、少々口の悪かった古本屋の彼 らは今はどうしているだろう?古本屋 はとっくになくなってしまっている。
 彼らは一緒にホークスが強くなっていくところを見ていたであろうか? 王監督辞任に泣いただろうか?

 王監督は『人寄せパンダ』どころか、良い選手、良い流れ、勝利を呼び寄せ、勝つ歓びと言う、王きな鷹の翼 で九州をすっぽりと幸せな気持ちに覆ってくれたのだった。


 ...そして、新しいホークスが始まる。

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